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平成23年予備 憲法答案例

平成23

設問1

第1 提起すべき訴訟

A大学法科大学院の在学生たる地位の確認訴訟(行政訴訟法4条)を提起すべきである。

第2 憲法上の主張

1.入学試験に際して、女性を優遇する措置をとることは、教育を受ける権利(憲法(以下法名略)26条)について、女性に比して男性を不当に差別するものであり、平等権(14条1項)に反し違憲である。

(1) そもそも、法適用が平等であっても、法内容が平等でなければ無意味であるから、「法の下」の平等(14条1項前段)とは、法内容の平等を含むと解する。

  そして、各人には事実的、実質的差異があるから、法の下の「平等」(同項前段)とは、絶対的平等ではなく相対的平等を意味しており、14条1項は事柄の性質に応じた、合理的根拠に基づくものでない限り差別的取り扱いを禁止する趣旨であると解する。

(2) 本件では、一個の人間として、また、一市民として成長・発達し、自らの人格を完成・実現する上で必要な教育を受ける権利(26条)という重要な権利について、「性別」という後段列挙事由による区別がなされている。

  そこで、厳格審査基準、すなわち①目的がやむにやまれぬものであり、②手段が必要不可欠かつ必要最小限度であるかにより合憲性を判断する。

ア 本件の目的は、法科大学院に進学する女性を増加させることにより、法曹における女性の増加へ結びつけることである。しかし、女性の法曹の割合は、過去20年において一貫して上昇傾向にあるのであって、女性法曹の人口の増加という目的をやむにやまれぬものということはできない。

イ 仮に、目的がやむにやまれぬものといえたとしても、女性の入学者を増加させる方法としては、女性が学びやすい学習環境を整備し、法科大学院の魅力を高めることなどによっても達成できるのであるから、過度な規制として、手段が必要不可欠かつ必要最小限度とはいえない。

設問2

第1 被告の反論および私見

(1) 積極的差別是正措置

ア 女性を優先的に入学させる制度を設けることは、積極的差別是正措置であるから、審査基準の厳格度は緩められるべきである。

イ 積極的差別是正措置は逆差別ではないかという疑いもあるし、「弱者」への優遇策が偏見に基づく場合や、かえって差別を固定化する危険性もあることから、安易に審査基準の厳格度を緩めるべきではない。

(2) 裁量

ア どのような入試制度を設けるかは、各種学校の教育的裁量に委ねられるから、審査基準の厳格度は緩められるべきである。

イ 各種学校において、どのような教育活動を行うかは、その教育的裁量に委ねられるところ、入学試験はいわば、教育活動の「入口」にあたるものであって、その制度の設計についても教育的裁量が認められると考える。

  よって、原告の主張する厳格審査基準ではなく、実質的関連性の基準すなわち①目的が重要で、②目的と手段との間に実質的関連性があるかによって合憲性を判断すべきである。

(3) 目的の重要性

ア ここ20年女性法曹の割合が増加傾向にあるといっても、その割合は極わずかであって、女性法曹の増加という目的は重要である。

イ 被告の主張するように、女性法曹の増加はわずかであり、多様性の実現という法科大学院設置の目的に鑑みても、女性法曹の増加という目的は重要と言える。

(4) 実質的関連性

ア 入試に当たり、女性を優遇するといっても、200人の定員のうちわずか20人について女性を優遇しているにとどまっている。また、女性の入学者を確実に確保するためには、女性の優先枠を設ける必要がある。よって、目的と手段の実質的関連性はある。

イ 確かに、200人の定員のうち、20人の優先枠というのは過大とはいえないとも思える。しかし、そもそも優先枠を設けなくとも、原告の主張する通り、法科大学院において女性が学習しやすい環境を提供することなどによって入学者に占める女性の割合を増やすことが可能なはずである。入試において特段の措置を設けていないA大学の学部における女性の比率が年々増加し、約40パーセントにまで達していることからも明らかである。

  よって、他の手段でも目的を十分達成でき、目的と手段との間に実質的関連性はない。

  したがって、本件優遇措置は違憲である。