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令和2年予備 刑訴法答案例

※内容の正確性は保証しません。あくまで参考程度にご覧ください。

 

令和2年予備試験 刑訴法

設問前段

1 裁判所は、弁護士の主張を認め免訴判決(刑事訴訟法(以下法名略)337条1号)をすべきか。一事不再理効の及ぶ範囲が問題となる。

(1) そもそも、一事不再理効は、一度訴追・処罰の危険にさらされた場合には、同一の犯罪について再度訴追・処罰の危険にさらされないという二重の危険禁止(憲法39条)から導かれるものである。

  そして、訴因変更制度(312条1項)の下、被告人は「公訴事実の同一性」が認められる範囲で、訴追・処罰の危険にさらされていたといえる。

そこで、一事不再理効は「公訴事実の同一性」が認められる範囲で及ぶと解する。

そして、「公訴事実の同一性」は公訴事実が①単一又は②同一といえる場合に認められると解する。

(2) ①単一性

   起訴事実①と②は、約半月という短期間に行われている上、その態様も「顔面」等を複数回「殴」って傷害を生じさせている点で類似している。そうだとすると、甲は「常習として刑法第204条…の罪を犯したる者」にあたり、起訴事実①②は、実体的には常習傷害罪の包括一罪を構成するといえる。したがって単一性が認められるとも思える。

  しかし、現行訴訟法の下では、審判対象は第一次的には訴因であるし、無罪判決にも一事不再理効が生じる以上実体を基準にすべきでない。また、常習傷害罪を構成する個々の傷害行為は相互に独立性の強い犯罪である。

  そこで、公訴事実の単一性についての判断は、基本的には前訴後訴の各訴因のみを基準に行うべきである。

  本件で、前訴後訴の両訴因は単に傷害罪とされているところ、両訴因からは常習性の発露を読み取ることはできず、常習性の発露という要素を考慮すべき契機は存在しない。そうすると、両訴因を基準とする限りにおいては、公訴事実の単一性は認められない(①不充足)。

(3) ②同一性

   また、起訴事実①②に時間的場所的接着性は認められず、客体も全く異なるのであるから、両訴因における基本的事実関係が同一とはいえない。したがって、公訴事実の同一性も認められない(②不充足)。

(4) よって、「公訴事実の同一性」は認められず、起訴事実②に一事不再理効は及ばない。

2 以上より、裁判所は免訴判決をすべきでない。

設問後段

1 ①の起訴が常習傷害罪の公訴事実として行われた場合、裁判所は免訴判決をすべきか。

(1) 一事不再理効が及ぶ範囲については前述の通りである。

(2) そして、①の起訴が常習傷害罪の公訴事実として行われた場合には、常習性の発露を起訴事実①のみから読み取ることができ、常習性の発露という要素を考慮すべき契機が存在する。

  そうだとすると、訴因を基準としても、起訴事実①②は常習傷害罪として包括一罪を構成し、公訴事実の単一性が認められる(①)。

(3) よって、「公訴事実の同一性」が認められ、起訴事実②に一事不再理効が及ぶ。

2 以上より、裁判所は免訴判決をすべきである。

 

【感想】

今年の予備試験刑訴は一事不再理効からの出題だったとのことで、面を食らった方が多かったのではないかと思います。自分も一事不再理効の問題はしっかり書いたことがなかったので、書いてみました。

答案を書いてみたもののかなり文字数が少なくなってしまいました。ただ、そこまで長々書くものでもないのかなと思います。

個人的な感覚としては、予備試験受験生レベルで一事不再理効までしっかり押さえている人はかなり少なかったのではないかと思います(自分自身も、予備試験受験生だった頃は判例まではしっかり覚えていませんでした)。問題を見て、一事不再理の問題であることに気づき、一事不再理効の客観的範囲は「公訴事実の同一性」の範囲で及ぶという規範を導いて何らかのあてはめをしていれば一定の水準には到達しているのではないかと思います(一事不再理効についてはちゃんとやっていなくても、訴因変更についてはそれなりに学習しているはずなので、規範定立までできれば何らかかけるはず)。つまり、判例を知ってるか知らないかで勝負はつかない(もちろん知っていて答案に反映できていれば跳ねますが)と思います。

参考程度にご覧くだされば幸いです。

 

【参考文献】

古江頼隆「事例演習刑事訴訟法[第2版]」436-454頁

 

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