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平成24年予備 行政法答案例

※内容の正確性は保証しません。参考程度にご覧ください。

 

平成24年予備 行政法答案例

 

第1 実体的違法について

1 まず、本件処分は処分要件を欠いた違法なものであると主張する。

(1) 本件処分は、本件規則7条2項6号及び本件条例9条に違反するものとして、本件規則11条に基づきなされたものと考えられる。すなわち、Aの従業員であるCが無断で自宅の下水道を乙市の公共下水道に接続したため、「指定工事店」(本件条例9条)たるAが「排水設備の新設等を行おうとする」(同条)場合に必要な「市長の確認」(同条)受けることなく「工事」(本件規則7条2項6号)に「着手」(同号)したと判断されたのである。

(2) しかし、本件工事はCが会社を通さずに、独断で行ったものであるし、CはAにおいて専ら工事の施工に従事しているのみで、Aの役員ではなかった。

  そうだとすれば、本件工事とAは実質的にみて無関係であり、「指定工事店」が「工事」に「着手」した場合には当たらない。

(3) したがって、本件処分は違法である。

2 次に、仮に処分要件を充足しているとしても本件処分は比例原則に反し違法であると主張する

(1) まず、本件規則11条は「できる」と規定しているし、処分の要否及び軽重を決定するにあたっては、公衆衛生等の観点から政策的・専門技術的判断が必要となる。そこで、同条に基づき処分をするか否か、あるいは処分をするとしても指定を取り消すか停止するかについては、効果裁量が認められると解する。

  もっとも、裁量処分も、裁量の逸脱・濫用がある場合には違法となり取消しの対象となる(行政事件訴訟法30条)。

(2) そもそも、排水設備工事の計画につき市長の確認を要する(本件条例9条)とされた趣旨は、排水設備が市民生活に不可欠であり、公衆衛生に大きな影響を与えうるものであることに鑑み、排水設備にかかる工事の公衆衛生適合性を担保しようとしたものと考えられる。

本件工事は市長の確認は受けていないとはいえ、工事につき十分な技術をもつCによりなされたもので、公衆衛生を害するような事態は発生していないし、Aが本件処分以前に同種の処分を受けていた事実もない。さらに、指定の取消しがなされると、Aは指定工事店として営業することができなくなり、Aが被る不利益は極めて大きい。

そうだとすれば、上記趣旨からみて、本件取消処分は比例原則に反した明らかに過大なものであり、裁量の逸脱・濫用がある。

(3) したがって、本件処分は違法である。

第2 手続的違法について

1 本件処分は聴聞手続(乙市行政手続条例(以下「行手条例」という)13条1項1号イ)を欠き違法であると主張する。

(1) まず、手続に違法があった場合でも、直ちに処分が違法となり取消の対象になるわけではない。しかし、行政手続法(以下「行手法」という)の目的(1条)に照らすと、行手法は同法に定められた適正な手続により処分を受ける権利を保障していると解されるから、同法の定める重要な手続を履践せずになされた処分は、特段の事情のない限り、取消の対象となると解する。

  本件では、規則を根拠に処分がなされているため、行手法は適用除外(同法3条3項)となるが、同内容の行手条例が定められているため、かかる条例に定められた重要な手続を履践せずになされた処分は取消の対象となる。

(2) 本件処分は、A社の指定工事店としての指定を取り消すことを内容とするので、「許認可等を取り消す不利益処分」(行手条例13条1項1号イ)にあたり、聴聞手続が必要になる。にもかかわらず、本件ではA社が乙市役所で説明を行ったのみであり、これを聴聞と解することはできない。また、行手条例13条2項に該当する事実もない。

(3) したがって、本件処分は、聴聞という重要な手続を欠くものとして違法である。

2 本件処分は、理由提示(行手条例14条)が不十分であり違法である。

(1) 上述の通り、行手条例の定める重要な手続を履践せずになされた処分は違法となる。

(2) そもそも、不利益処分の際に理由提示が必要とされた趣旨は、行政庁の恣意を抑制し、処分の名宛人の不服申立てに便宜を与える点にある。かかる趣旨から、理由提示の程度としては、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がなされたのかをその記載自体から了知しうるものでなければならないと解する。

(3) 本件では、通知書に「Aが、本市市長の確認を受けずに、下水道接続工事を行ったため」と記載されるのみで、具体的な事実関係が示されていないし、いかなる法規を適用したのかについても記載されていない。

  よって、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がなされたのかをその記載自体から了知することはできないといえる。

(4) したがって、本件処分は理由提示という重要な手続が不十分にしかなされていないから、違法である。

 

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