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平成25年予備 商法答案例

予備25年 商法

設問1

1 Aとしては、本件総会には、説明義務違反(会社法(以下法名略)314条)の瑕疵があり、「決議の方法」に「法令…違反」があるといえるから、本件総会の効力を決議取消しの訴え(831条1項1号)を提起するものと考えられる。

(1) そもそも、取締役の説明義務の趣旨は、株主に議案の適否を合理的に判断するための資料を提供する点にある。そこで、説明義務の程度としては、一般的な株主を基準として、株主が合理的に判断するのに、客観的に必要な範囲の説明をすれば足りると解する。

ア 本件総会では、Aが自らの解任の理由を問うたのに対し、Bは「それはあなたもわかっているはずであり、答える必要はない」とのみ回答し、他になんらの説明もしていない。これでは、株主はAの解任の適否を判断するために必要な情報が与えられたものとはいえない。

イ したがって、説明義務違反が認められる。

(2) そして、発行済株式の75パーセントを有するXグループが賛成している以上、説明義務違反は「決議に影響を及ぼさない」といえるものの、説明義務は、会社経営に関与しない株主に情報を提供して、株主総会の意義を実質化する重要な義務であるから、「違反する事実が重大でな」いとはいえない。したがって裁量棄却(831条2項)されることはない。

(3) 以上より、Aは本件総会の決議の効力を争うことができる。

設問2

1 AはY社株式の15%を有しているから、「総株主の議決権の百分の三以上の議決権を有する株主」にあたり、433条1項1号に基づき、「会計帳簿又はこれに関する資料」の「閲覧」を請求することができる。

2 もっとも、Y社としては、AとY社とが「実質的に競争関係」にあるとして、上記請求を拒めないか(同条2項3号)。

(1) そもそも、同号は、主観的意図を要件としていないし、仮に請求時点で競業のために利用する意図がなかったとしても、将来的に利用される可能性は否定できない。したがって、「実質的に競業関係」にあるとは、客観的に請求者が競業関係にあれば足り、主観的意図は問題にならないと解する。

ア まず、Z社の発行済株式は、Aが67%も保有しているのみならず、同社の取締役はA及びAの親族のみである。そうだとすると、Z社は実質的に見てAに支配されているといえ、両者は同一視することができる。そして、そのようなZ社とY社は新築か中古かという違いはあるものの、不動産事業を行っていることは共通であり、取引が競合することは十分に考えられる。

イ したがって、AとY社とは客観的に競業関係にあるから、「実質的に競業関係」にあるといえる。

(2) 以上より、Y社は、Aによる請求を拒むことができる。

設問3

1 株式交換の効力発生前(①)

(1) まず、Aは本件総会で、株式交換に「反対」しているから、「株主総会に先立って」株式交換に「反対する旨」の「通知」(785条2項1号イ)をしているのであれば、Aの有する株式の買取りをY社に請求することができる(同条1項柱書)。

(2) また、Aとしては、株式交換の差止めを請求することが考えられる(784条の2)。しかし、略式株式交換を除いて、差止めが許されるのは当該株式交換が「法令又は定款に違反」する場合に限られる(同条1号)から、交換比率の不当性を理由に差止めを請求することはできない。

(3) さらに、Aは本件株式交換を承認した総会決議の取消しの訴え(831条1項3号)を提起することも考えられる。

ア まず、X社はY社の株式交換の相手方であるから、「特別の利害関係を有する者」にあたる。また、Xグループが議決権を行使したことにより、不当な交換比率の株式交換が承認されているから、「著しく不当な決議」がなされたといえる。

イ したがって、Aの訴えは認められる。

2 株式交換の効力発生後(②)

(1) まず、Aは、承認決議に取消事由がある以上、決議取消の訴えを提起することができるとも思える。しかし、法的安定性を確保するため画一的な処理の手段として無効の訴えが法定された趣旨から、株式交換の効力発生後は、株式交換無効の訴えにより争うべきである。

(2) そこで、Aとしては、本件株式交換の無効の訴え(828条1項11号)を提起することが考えられる。

ア まず、交換比率が不当であることが合併の無効事由となるか。

  そもそも、無効の訴えの趣旨は、法的安定性の確保にあるため、無効事由は重大な瑕疵に限定すべきである。

  そして、交換比率が不当であっても、反対株主は株式買取請求権による保護が与えられているため、重大な瑕疵とはいえない。

  したがって、交換比率が不当であることは、無効事由にはならない。

イ もっとも、上述の通り、本件承認決議には取消事由があるため、これが株式交換の無効事由とならないか。

  この点について、株式交換株主総会特別決議(783条1項、309条2項12号)が要求された根拠は、株式交換が株主にとって重大な影響を与える点に求められる。かかる根拠からすれば、特別決議を欠くことは重大な瑕疵といえ無効事由となる。

  もっとも、無効の訴えの出訴期間徒過を回避するため、決議の無効が判決により確定されなくても、承認決議に取消事由があれば、株式交換の無効事由として主張できると解する。

ウ したがって、Aによる株式交換無効の訴えは認められる。

 

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