平成25年予備 憲法答案例
※内容の正確性は保証しません。参考程度にご覧ください。
予備25年 憲法
第1 Dの主張
1 甲案および乙案は、いわゆる世襲候補者の立候補の自由(憲法(以下法名略)15条1項)を侵害するものであり、違憲である。
(1) 立候補の自由は、選挙権の行使と表裏一体をなすものとして、15条1項により保障される。
(2) 乙案によれば、世襲候補者にあたれば、一定の地域から立候補すること自体ができなくなるから、制約は認められる。
さらに、甲案による場合でも、公認を受けられなくなれば、選挙活動等において政党からのバックアップを受けることができず、事実上立候補が困難となるため、制約が認められる。
(3) 選挙権が、民主制の基盤となる重要な権利であること、および上記制約の重大性に鑑みれば、立候補の自由を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由が認められなければならず、やむを得ない事由があるといえるためには、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ立候補の自由を認めることが事実上不可能ないし著しく困難と認められなければならない。
(4) 本件では、世襲候補者が選挙において事実上有利であるとしても、世襲議員についてはいまだ賛否両論ある段階で、必ずしも世襲候補者の存在が選挙の公正を害するかは明らかでない。
したがって、制限をするやむを得ない事由が認められない。
2 甲案および乙案は、立候補について、世襲候補者を世襲候補者でない者よりも不利に扱うものであるから、平等権(14条1項)に反し違憲である。
(1) 14条1項後段列挙事由は、民主主義社会において原則として不合理とされる差別の代表であるところ、議員の子であるという地位は後段列挙事由たる「門地」にあたる。
そして、差別の対象は、立候補の自由という重要な権利である。
したがって、違憲性の判断は厳格審査基準、すなわち①目的がやむにやまれぬものであり、②手段が必要不可欠かつ必要最小限度でなければならない。
(2) 本件では、上述の通り、世襲議員の存在が、選挙の公正を害しているかは明らかでないから、目的がやむにやまれぬものとはいえない。
さらに、同一都道府県内であれば一律に立候補、および公認を不可能とするのは過剰であり、必要最小限度とはいえない。
3 公認候補とすることを政党に禁ずる甲案は、結社の自由(21条1項)を侵害し違憲である。
(1) そもそも政党は、国民がその政治的意思を国政に反映させ実現させるための最も有力な媒体であって、議会制民主主義を支える上において極めて重要な存在であるから、高度の自主性・自律性が与えられるべきものである。
(2) 甲案は、一定地域における立候補者の公認を政党に一切認めない点で政党の自律権を侵害するものである。
第2 反論
1 甲案については、あくまで公認を受けられないだけで、立候補は可能であるから、そもそも立候補の自由に対する制約がない。
2 選挙制度をどのように設計するかは国会の広範な裁量に委ねられており(43条2項、44条、47条)、国会はその裁量の範囲内で立候補の自由の制限も可能である。
3 政党に自律権が認められるとしても、政党は公的性質を有するものであり、一定の規制を行うことも許される。
第3 私見
1 立候補の自由の侵害について
(1) 選挙において、候補者が支持政党による公認を受けているかは有権者にとって重要な判断要素であるし、莫大な費用・労力のかかる選挙活動において政党のバックアップがあるか否かは候補者にとって死活問題である。
したがって、甲案によっても立候補の自由に対する制約はあるというべきである。
(2) もっとも、選挙制度の設計につき、国会の裁量があることは否定できない。そこで、立候補の自由が直接制約されるような制度設計でない場合には、緩やかな基準、すなわち①目的が正当で、②目的と手段に合理的関連性があるかにより判断すべきと解する。
ア 甲案については、あくまで事実上立候補が困難となるに過ぎないので、合理性の基準で判断する。
本件規制の目的は、世襲候補者とそれ以外の者との間の選挙における格差を是正するというものであり、正当といえる。
そして、公認を受けることができなければ、公認を受けた他の候補者との間で格差が縮小すると考えられるから合理的関連性がある。
イ 一方、乙案については、立候補そのものを制限するものであるから、原告の主張する基準によるべきであり、結論も原告の主張する通り違憲である。
2 平等権侵害について
(1) 平等権侵害を判断するにあたっても、被告の主張する通り選挙制度設計に裁量が認められることから、合理性の基準によるべきである。
(2) そして、上述のとおり目的は正当であり、目的と手段の間に合理的関連性があるから合憲である。
3 結社の自由の侵害について
(1) 確かに、被告の主張する通り、政党が他の結社とは異なる公的性格を有することは否定できないから、政党に対する規制があるという一事をもって違憲と解することはできない。もっとも、政党の自律的存在や運営が大きく阻害されるような規制については、なお自律権を侵害するものとして違憲となる。
(2) 政党にとってどのような候補を公認候補とするかは、将来の党員候補を選定するという点において、政党の自律的運営に大きく関わる重要な問題である。
そうだとすれば、甲案のように、政党の自由な公認を制限する法律は、政党の自律権を侵害するものといえる。
(3) したがって、甲案についても違憲である。
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