くうねるあそぶ ―司法試験・予備試験ブログ―

19年予備試験合格者が、20年司法試験合格発表まで勉強を続けるためのブログ

平成24年予備 民訴法答案例

※内容の正確性は保証しません。参考程度にご覧ください。

 

予備24年 民事訴訟

設問1

第1 前訴既判力が後訴に及ぶ場合

 まず、既判力とは、前訴確定判決の後訴での通用力をいう。既判力は、審理の弾力化のため、「主文に包含」される訴訟物たる権利関係の存否について(民事訴訟法(以下法名省略)114条1項)、当事者間についてのみ(115条1項1号)生じる。

 そして、後訴当事者が同一である場合には、既判力は、前訴後訴訴訟物が①同一の場合、②矛盾関係の場合、③先決関係の場合に後訴に作用すると解される。

 中でも、前訴後訴訴訟物が異なるにもかかわらず、後訴へ既判力が作用するのは②矛盾関係又は③先決関係の場合である。

第2 第1訴訟の既判力が第2訴訟に及ぶか

1 まず、第1訴訟における訴訟物は、本件売買契約の売買代金400万円のうちの150万円の支払請求権であり、第2訴訟における訴訟物は、残部たる本件売買代金400万円のうちの250万円の支払請求権であるところ、両訴訟物は法律上両立するから、②矛盾関係にはない。

  もっとも、第2訴訟は残部請求にあたるものであり、第1訴訟の訴訟物たる400万円のうちの150万円の支払請求権の存在を前提とするものであるから、第1訴訟と第2訴訟の訴訟物は先決関係にある。

2 この場合、後訴裁判所は、前訴確定判決で示された150万円の支払請求権が存在するという判断に反する主張や証拠申出は排除しなければならず(消極的作用)、前訴確定判決の判断を前提とした上で(積極的作用)、前訴基準事後の事由の有無を審査して新たな基準時における判断を示した本案判決をしなければならない。

第3 第2訴訟におけるYの主張

1 ①について

(1) Yの①の主張は、XY間の売買契約の成立自体を否認するものである。売買契約に基づく代金支払請求権は、売買契約が成立しなければおよそ存在し得ない。

  そうだとすると、①の主張は、150万円の支払請求権が存在するという前訴の既判力ある判断に反する主張であるから排除される。

  したがって、①の主張は許されない。

(2) Yの②の主張は、相殺の抗弁である。相殺の効果は、相殺適状時に「さかのぼってその効力を生じる」(民法505条2項)から、本件では平成22年2月2日にさかのぼって相殺の効果が生じる。そうだとすれば、②の主張は、前訴基準時たる口頭弁論終結時(民事執行法35条2項参照)以前の事由を主張するものといえ、300万円のうち250万を除いた50万円の部分についての相殺の主張は150万円の支払請求権が存在するという前訴既判力ある判断に反し許されないとも思える。

  しかし、相殺の抗弁は、「対抗した額について」のみ既判力を生じるにとどまるから、250万円を超える分については、相殺の抗弁の効力は問題とならない。

  したがって、②の主張は許される。

設問2

1 裁判所は、②の主張および弁済の主張の内容たる事実が認定可能との心証に至っている以上、請求棄却判決をすべきである。

2 もっとも、②の相殺の抗弁による訴求債権の消滅の認定は、弁済の抗弁を認定した後でなされなければならない。

  なぜなら、相殺の抗弁は自働債権を対当額で消滅させるものであり、被告にとって新たな経済的不利益を伴うものだからである。

3 したがって、裁判所としては、請求棄却判決をすべきであるが、その際自働債権が220万円の範囲でのみ不存在である点を明確に示すことに留意しなければならない。

 

にほんブログ村に参加しています

↓↓クリックよろしくお願いします↓↓

にほんブログ村 資格ブログ 司法試験へ
にほんブログ村