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平成30年京大ロー 民法(改正法)

民事で有名な京大ローの入試問題を改正民法で解いてみました。

※内容の正確性は保証しません。参考程度にご覧ください。

 

平成30年 民法

第1問

第1 (1)について

1 Cは、甲に設定された譲渡担保権を実行し、Aに対して甲の引渡しを請求することができるか。

(1) まず、Cが譲渡担保権の実行を行うためには、譲渡担保設定契約が有効に成立していることが必要である。本件において、譲渡担保設定契約はBがAを代理(99条1項)して締結されているため、BC間で締結された譲渡担保設定契約の効果がA有効に帰属しているかが問題となる。

ア Aは高校生であり、「成年に達しない子」(818条1項)であるから、父Bは「親権」者にあたる。そうだとすると、BはAに対して法定代理権(824条1項)を有するため、BがAを代理してなされた本件譲渡担保設定契約は有効であるとも思える。

  もっとも、本件譲渡担保設定契約が、利益相反行為(826条1項)にあたるのであれば、無権代理(113条1項)となり、その効果はAに帰属しない。そこで、本件譲渡担保設定契約が利益相反行為にあたるか以下検討する。

(ア) まず、親権者の代理行為が利益相反行為にあたるか否かは、取引安全の観点から外形的客観的に判断すべきである。

(イ) 本件では、Aの学費や進学準備費に充てる目的であったものの、Bは自身の名義で金銭を借り入れ、その債務につきA所有の不動産に譲渡担保権を設定しているので、外形的にはAとBの利益が相反する。

イ したがって、Bによる本件譲渡担保設定契約の締結は利益相反行為にあたる。

(2) そうだとすると、本件譲渡担保設定契約は、成年に達したAの追認(116条本文)なき限り無効であり、効果はAに帰属しない。

2 よって、Aに対して甲の引渡しを請求することができない。

第2 (2)について

1 Cは、Aに対して甲の引渡しを請求することができるか。

(1) Cが譲渡担保権を実行するためには、Aに譲渡担保設定契約の効果が帰属していることが必要であるのは前述の通りである。

  そこで、本件譲渡担保設定契約の締結が利益相反行為にあたるのか。前述の基準で判断する。

  本件では、第三者たるDの名義で金銭を借入れ、その債務につきA所有の不動産に譲渡担保権を設定しているので、外形的にはAとBの利益が相反するとはいえない。

(2) そうだとしても、本件譲渡担保設定契約の締結が代理権の濫用(107条)にあたり、「代理権を有しない者がした行為」とみなされる結果、無権代理としてAに効果帰属しないのではないか。

ア そもそも、利益相反行為にあたらない行為については、親権者の広範な裁量に委ねられている(824条)。そこで、当該行為が本人の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的にしてなされるなど、親権者に子の代理権を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、法定代理権の濫用にはあたらないと解する。

  そして、そのような特段の事情が存する場合、「その目的を知り、又知ることができたとき」には、当該行為は、無権代理行為となる。

イ 本件で、BがAの所有する不動産甲に譲渡担保権に設定したのは、Dの競馬資金を工面することが目的であった。このような目的は、Aの利益を考慮せず、専らDの利益のみを図るものであり、親権者にこの代理権を授与した法の趣旨に著しく反する。

  そして、DC間の取引においてDはCに対して、200万円を競馬の資金に充てることを告げていたのであるから、「その目的を知」っていたといえ、無権代理行為となる。

(3) そうだとすると、本件譲渡担保設定契約は、成年に達したAの追認(116条本文)なき限り無効であり、効果はAに帰属しない。

2 よって、Aに対して甲の引渡しを請求することができない。

第2問

1 DはCに対して乙債権の支払いを求めているが、かかる請求は認められるか。

(1) まず、Cとしては、弁済により生じた事後求償権(459条1項)と乙債権との相殺(505条1項)により乙債権は消滅していると反論することが考えられる。

  まず、CはBから依頼を受けて保証人となっているから、「委託を受けて保証をした場合」にあたる。そして、CはAに対して、保証人として「弁済」をしているので、Bに対する事後求償権が発生しうる。

  そして、かかる事後求償権はCによる「差押え後」に取得しているが、保証委託契約という「差押え前の原因」に基づき生じたものであるから、相殺を「対抗することができる」(511条2項本文)。

  したがって、Cの反論は認められ、Dの請求は認められないとも思える。

(2) しかし、Cは弁済後にBに対して「通知」(463条3項)をしておらず、かつBはAに対して二重弁済している。そこで、Bは自己の弁済を「有効であったものとみなすことができる」結果、Cの事後求償権は発生せず相殺はできないのではないか。Bの主観事情が明らかでないため、場合に分けて検討する。

ア BがCの弁済につき善意の場合

  Cが事後「通知」を怠っており、かつ「主たる債務者」たるBが「善意」でAに弁済しているため、Bは自己の弁済を「有効であったものとみなすことができる」。したがって、CのBに対する事後求償権は発生せず、相殺もできない。

イ BがCの弁済につき悪意の場合

  Cが事後「通知」を怠っても、Bが弁済の事実につき悪意であるならば、Cによる弁済は確定的に有効である。したがって、CのBに対する事後求償権は発生し、乙債権と相殺することができる。

2 以上より、①BがCの弁済につき善意の場合には、Cの反論は認められないため、Dの請求は認められる。これに対し、②BがCの弁済につき悪意の場合、Cの反論が認められ、Dの請求は認められない。

 

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