くうねるあそぶ ―司法試験・予備試験ブログ―

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事例問題から考える憲法 09

 ※内容の正確性は保証しません。参考程度にご覧ください。

 

児童扶養手当と遺族年金の併給禁止 09

 

1 児童扶養手当と遺族年金の併給禁止を定める規定は、Xの「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法(以下法名略)25条1項)を侵害し、違憲であるから、Xの主張が認められるのではないか。

(1) まず、そもそも、25条の規定は単なるプログラム規定にすぎず、裁判規範性を有しないとの主張が考えられる。確かに、「健康で文化的な最低限度の生活」がいかなるものかは不明確であって、具体的な権利性まで導くことはできない。もっとも、だからといって憲法が明文で「権利」と規定しているにもかかわらず、その法規範性を一切否定するのは妥当でない。そこで、生存権は、それを具体化する法律が定められて初めて具体的な権利となる抽象的権利であると解する。

(2) そして、「健康で文化的な最低限度の生活」という基準は不明確であるし、生存権の実現の方法は一義的ではなく、専門技術的判断が要求されるから、25条の規定の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの決定は立法府の広い裁量に委ねられているというべきである。もっとも、かかる立法裁量を考慮してもなお、当該立法措置が著しく妥当性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合には、生存権を侵害するものとして違憲になると解する。

(3)ア これに対しては、併給禁止の目的は公平の観点から二重の所得保障を禁止する点にあり合理的といえるし、かかる目的の達成のため結果的に不十分な所得保障になったとしても、それが妥当か否かはなお裁量の範囲内に属するとの主張が考えられる。

   しかし、本件事案で、児童扶養手当の支給から遺族厚生年金の支給に変わったとたん給付額がそれまで4割以下に減っているように、併給禁止規定はすでに児童扶養手当を受けている者にとって重大な影響を及ぼすものである。

   そして、このような影響は、すでに児童扶養手当の給付を受けている者の生計の維持すら困難にし得るものであり、二重の所得保障の禁止という目的に対して過剰な負担を課すものといえる。

 イ そうだとしても、最終的には生活保護制度の利用の途が残されている以上、公的年金の給付水準がいかに低くとも、生存権保障は生活保護制度によって担保されているためなお裁量の逸脱にはあたらないとの主張が考えらえる。

   しかし、生活保護制度は自助を前提にした他法他政策の活用を優先させる制度であって、生活保護制度の存在を理由に他法他施策の欠陥が治癒されたと解するべきではない。よって、併給禁止規定に欠陥がある以上、裁判所は個別具体的な司法的救済を与えるべきである。

   したがって、併給禁止規定は著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないといえる。

(4) 以上より、併給禁止規定はXの「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害するものとして、違憲である。

2 したがって、Xの主張は認容される可能性が高いとのアドバイスをすべきである。

 

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