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平成23年予備試験 商法答案例

平成23年予備 商法

設問1

1 平成23年3月25日に開かれた取締役会(以下「本件取締役会」という)では、取締役Bに対して招集通知(会社法(以下法名略)368条1項)がなされていない。そこで、本件取締役会は無効となるのではないか。

(1) そもそも、Bは「特別の利害関係を有する取締役」(369条2項)にあたり、「議決に加わることができない」(同項)から、招集通知を送る必要がないのではないか。

ア まず、「特別の利害を有する取締役」(以下、「特別利害関係取締役」という)とは、忠実義務違反を生ずるおそれのある、会社の利益と衝突する個人的利害関係を有する取締役をいうところ、取締役Bは株式譲渡の当事者であるから、これにあたる。

イ もっとも、特別利害関係取締役にあたるとしても、招集通知は送る必要があると解する。なぜなら、取締役会においては、あらかじめ定められた議題以外の議題も審議・議決することができるし、そもそも目的事項を特定して招集する必要もないので、特別利害関係取締役にも、取締役会に出席する機会を与える必要があるからである。

(2) そうだとすれば、本件取締役会には招集手続に瑕疵があることになる。このように、招集手続に瑕疵のある取締役会決議の効力はいかに解すべきか。

ア そもそも、瑕疵ある取締役会決議の効力については会社法上明文の規定がない。そこで、瑕疵ある取締役会決議の効力は、民法上の原則に従い無効と解すべきである。

 もっとも、招集通知を欠く取締役が出席してもなお、決議に影響がないと認めるべき特段の事情がある場合には、例外的に有効になると解する。

イ 本件では、招集通知を受けなかったBは前述の通り特別利害関係取締役にあたり、議決に加わることができない。そうだとすると、取締役が出席してもなお決議に影響を及ぼさないため、特段の事情があるといえる

ウ よって、本件取締役会は有効である。

設問2

1 X社は、自らに招集通知が発送されていないため、株主総会の「招集の手続…が法令に違反」(831条1項1号)するとして株主総会の決議取消しの訴え(847条1項)を提起しその効力を争うことが考えられる。かかる訴えを提起するためには、X社が「株主等」(同項)である必要があるため、X社が株主にあたるか検討する。

(1) まず、Xは未だ名義書換が未了であるから、会社に対し株式を取得したことを対抗できないのが原則である(130条1項)。

  もっとも、名義書換を対会社対抗要件とした趣旨は、多数の変動する株主について画一的処理を可能にすることで会社の事務処理上の便宜を図る点にある。

  そうだとすれば、会社が名義書換を不当に拒絶した場合には、そのような便宜を享受させる理由はなく、会社は、信義則上、名義書換未了であっても、株主であることを否定できないと解する。

そこで、以下、株主の名義書換の拒絶が不当拒絶にあたるか検討する。

ア まず、Y社は公開会社ではない会社(以下、「非公開会社」という)であるから、Y社に対して名義書換を請求するためには、Y社の承認を得なければならない(134条、133条)。

そして、本件では、取締役会で不承認決議(139条1項)がなされている以上、これを理由に名義書換を拒絶することは不当とはいえないとも思える。

イ しかし、不承認決議がなされた場合、その旨を通知しなければならず(139条2項)、承認請求の日から2週間以内にこの通知がなされない場合には承認したものとみなされる(145条1号)。

  本件では、2週間以内にこの通知がなされていないため、会社は承認したものとみなされる。

ウ よって、会社が、不承認決議があったことを理由に、名義書換を拒絶することは不当拒絶にあたる。

(2) したがって、Y社はXが株主であることを否定できず、Xは「株主」として株主総会決議取消の訴えにより効力を争うことをできる。

設問3

1 本問では、Y社株式がXとAに二重に譲渡されており、かつAが先に株主名簿の名義書換を行っている。そのため、Y社株主は確定的にAに移転し、その結果Xは株主たる地位を失うのではないか。

(1) そもそも、株券不発行会社において、株主名簿の名義書換が第三者対抗要件(130条1項)とされた趣旨は、株主名簿による公示を通じて、譲受人間の利益を調整する点にある。そこで、「第三者」(同項)とは、名義書換未了を主張する正当な利益を有する者をいうと解する。

(2) 本件で、AはY社の代表取締役であり、Y社を代表して不当拒絶を行った張本人である。そうだとすれば、Aは名義書換未了を主張する正当な利益を有するとはいえない。

(3)  したがって、AはX社に対して名義書換未了を主張し得ない結果、X社がY社の株主となるから、設問2同様、X社は、設問の定時株主総会について、株主総会決議取消しの訴えをもって争うことができる。